ガス消火設備のためのドアファンテスト
【ガス消火設備の長所】
データセンターは「ガス消火設備」によって防護されています。スプリンクラーと違って水損がなく、火災が発生しても最短時間で復旧が可能だとされています。ガス消火設備は高付加価値防護空間にとって、唯一にして完ぺきな解決法だと考えられています。
【ガス消火設備の短所とリスク】
我々一般の日本人は、ガス消火設備に完ぺきな消火能力を期待します。世界的メーカーが開発・製造し、日本の消防法に設計・施工・検査・点検の根拠があるためです。
しかし当の世界的メーカーは製品の性能しか保証しません。第3者が施工した防護空間における消火能力に関しては保証しません。それは当然のことで、隙間だらけの空間の保証などできるはずもありません。
他方、消防法が確認するのは、提出された書類に瑕疵がないこと、設備と書類が一致すること、ガス放出までが確実に行われること、3つにとどまります。サーバールームには隙間はなく、避圧口の有効開口面積は設計通りであるとされます。
【損保会社の解決策】 実ガス放射テストからドアファンテストへ
消火能力の保証を必要とするのは損保会社です。欧米の損保会社が要求したのは「ガスの実放射テスト」でした。
完成検査時に規定通りのガスを放出し、空間が壊れないこと、隙間が十分に少なくて再着火の危険がないことを実証させました。実際にやってみると半数以上が不合格で、補修後に保険の引き受けが行われました。1988年までのことです。その時までに使われていたのはハロン1301というガスでした。強力な消火能力と安全性を持っていましたが、強力なオゾン破壊能力も具備していたため製造禁止になりました。当然ですが、テストは出来なくなりました。
新たに「ハロン系」「不活性ガス系」2種類の代替ガスが開発されました。前者はオゾン破壊係数がゼロではないため、後者は量が多すぎるため、実ガス放射テストができません。ガス消火設備メーカーによる開発と同時進行的に開発されたのが、ドアファンテストです。
【ドアファンテストのメリット】 実ガス放射テストより優れているドアファンテスト
ガス放射テストはイベントとしては華々しく人気がありましたが、大きな欠点がありました。
①ガスが高価で実際に放出されるのは一つのプロジェクト当り1回だけ(補修後のテストが行われないだけでなく、10区画あっても1区画しかテストされなかった)
②不合格になってもどこに隙間があるか判らないため、当てずっぽうのシールしか出来ない
③実放出すると、空間内のものが散乱する
ドアファンテストの利点は次の通りでした。
①に対して ガス再充填の費用、ボンベ交換作業が不要であるため、圧倒的に安価であること
②に対して ファンでの加圧・スモークパッファの使用をすると、どこに隙間があるか判るため、有効なシールが出来る
③に対して ドアファンテストの加圧減圧は、ガス放射とは比較にならないくらい穏やかであるため、サーバールームが稼働中であってもテストが出来る
全ての部屋で合格するまで何度でもテストが出来るがあるため、ガス消火設備の信頼性は急激に上昇し、ISO14520・NFPA2001では義務化されました。
【スプリンクラーより信頼されるようになったガス消火設備】
明文化はされていませんが、海外ではガス消火設備は「消火設備」、スプリンクラー設備は「延焼遅延装置」と評価されています。30年間で逆転現象が発生しています。日本ではどうでしょうか?
【ドアファンテストが行う2つの確認】
ドアファンテストは二つの確認を行います
消火ガスの実放射(モントリオール議定書発効以前は行われていた)
ハロン1301実放射の写真
ピーク圧グラフ
不活性ガスの場合、10秒後位がプラスのピーク圧 ハロン系の場合、放出直後にマイナスのピーク圧