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Ⅰガス消火設備のためのドアファンテスト

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Retrotec社の気密測定システム

ドアファンテスト

ドアファンテストの目的は防護空間の完成度の向上です。
パッシブファイヤープロテクション(受動的防火)性能、ガス消火設備の保持時間、 空間の温湿度管理を客観的に数値化し 向上させます
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ドアファンテスト Door Fan Test

本来は、空間の床・壁・天井に存在する隙間の合計面積(ELA)を測定する手法を指します。具体的には下記のような手順を踏みます。
防護空間に設けられているドアの一つを開放してパネルをセットし、 そこに強力で回転制御が容易なファンをはめ込みます。
パネルのセットにはドアチェック等を外すだけで、ドアそのものを取り外す必要はありません。

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そのファンを使って防護空間を減圧・加圧します。
その際、室内外の気圧差とファンの中を通り抜ける空気の量を測定します。
小さな差圧で流量が大きければ 隙間がたくさんあり、逆であれば小さいことが想像できます。
魔法瓶のように隙間がゼロであれば、どんなに差圧が大きくても流量はゼロです。

隙間の場所を探し出すことも容易です。
15Pa程度に空間を加圧しながら、 漏れが疑われる箇所にスモークパッファで少し煙を与え、煙が吸い込まれればそこは漏洩箇所です。隙間には必要なシールを施すことになります。

単なる気密測定としてのドアファンテストでは、測定値(気圧差とファン内部を流れる流量)を使って 空間に開いた隙間量を算出します。その数値がある程度以下になるように隙間を少なくしてゆくというのが、高気密住宅などの性能保証に求められるテストです。

消火設備に求められるドアファンテストには別の意味があります。
ガス消火設備で守られた「防護空間」は高付加価値の空間です。
スプリンクラーなどの水や粉末消火薬剤では使った 消火では却って本来の価値を損ねてしまいます。ガス消火設備は現代の情報化社会を支える情報システム、データセンター、 書類保管施設、そして人類の財産である美術館・博物館・アーカイブなどに設置されています。
その設備が設計どおりの時間消火性能を保持しているか、 放出時に肝心の建物を壊さないか、それらを客観的な数値で確認してゆく作業がドアファンテストです。

NFPA2001、ISO14520に記載されているドアファンテスト

ガス消火設備に求められるドアファンテストには単なる気密測定とは別の意味があります。 列挙すると

 ①再着火しない時間(消火能力の保持時間)の計算 
②避圧装置の性能チェック 
③防護空間の受動的防火性能のチェック 
④サーバー室の温度湿度管理を担保するためのシール性能チェック 
以上の4点です。


①保持時間の計算と予測

隙間面積の測定・隙間の位置特定を前提として、ガス消火設備の消火能力の保持時間を計算予測します。

ガス消火設備の長所は、クリーンであるということです。短所は目に見えないことです。

界面の降下

ほとんどの消火ガスは空気より比重が高いため空気との混合ガスも空気より重いのです。
従って、防護空間の下部に隙間があるとそこから混合ガスが漏れ出し、上部からは同量の新鮮な空気が入って来ます。
混合ガスの上面が界面で、その界面が時間の経過と共に下がってきます。(1989年以前は実際にハロンガスが放出され、防護空間内部の様々な高さに設置されたガスの濃度計でモニタリングを行い、保持時間の測定をしていたのです)

 

 pic01  ハロン1301実放出の貴重な映像。三種類の高さに設置した濃度計によってモニタリングされた消火ガスの測定値が下のグラフです。
 pic02 A:
床からの高さ約4.4mに設置した濃度計が検知したハロン消火薬剤濃度の変化2分後消火能力効果がなくなる
 pic03 B:
床からの高さ約3.7mに設置した濃度計が検知したハロン消火薬剤濃度の変化5分後消火能力効果がなくなる
 pic04 C:
床からの高さ約2.2mに設置した濃度計が検知したハロン消火薬剤濃度の変化

底に小さな穴の開いたバケツに水を入れると水面(界面)が下がりますが、それと同じ現象が発生していることがお判りいただけます。
界面より上の空間には消火能力はありません。防護されるべきものが(例えばサーバーラックの上部、或いは電源ケーブル)界面の上に頭を出した時点で保持時間が終了するということになります。

比重の異なる様々なガス

同じサイズの穴が空いていたとしても、ガスの重さによって界面が下がる度合いは異なります。穴の空いたバケツに水を入れるのと、二酸化炭素を入れるのとを比較すると、水のほうが早く洩れ出てしまいます。 それと同様に、空気との混合ガスも比重の高いものほど早く漏れ出します。Retrotec社のソフトウェアCA2001(CleanAgent2001)は現在世界で使用されている全ての消火ガスに対応しています。

 

ドアファンテスト以前に必要なチェック(隙間より深刻な問題)

隙間も問題ですが、実質的にはるかに深刻なのは静圧のインバランスです。
空調ダクト等に漏れがある場合など、最悪の場合わずか数秒で消火能力は失われてしまいます。ドアファンテストの際、まず一歩として最初にチェックされるのがその項目です。

pic06

 

ドアファンテストのメリット

高価で環境負荷の大きな消火ガスを放出することなく、全ての部屋を合格するまで何度でもテストできるのが ドアファンテストです。
1989年以前に行なわれていた放出テストは如何にもプロフェッショナルでしたが、 複数の防護空間があっても放出したのは1区画だけでしたし、引渡し検査後は二度とは行なわれないというかなり片手落ちな作業でした。 時間の経過と共に空間内の隙間は増え、ダクトも劣化します。従って毎年毎年テストする必要があるのです。
ドアファンテストは、高価なガスを放出することなく、 全ての防護空間をテストでき、毎年定期的な点検が可能で、高付加価値の財産を守ります。テストを行うに当って設備の運転を止める必要はありません。通常通りの業務が可能です。ドアファンテスト時の短時間のみ空調の運転を止めるだけです。NFPA2001は毎年の定期点検を求めています。


②避圧装置の性能チェック

防護空間にガスを放出すると内部の気圧が上がります。
例えば全く隙間が存在しない100m3の空間を想像してください。濃度33%の混合ガスにするためには50m3のガスを入れる必要があります。 すると内部の気圧は1.5気圧になります。

1.5気圧の部屋というのは壁にどの程度の圧力が掛かっているのでしょうか?
1気圧は1㎡当り10トンの圧力が掛かっているということですから、0.5気圧内圧が上昇すると1㎡当り5トンの力が加わります。

隙間が無ければどんなに丈夫な部屋でも壊れてしまいます。(実際に測定してみますと、気密の高い防護空間でも実はかなりの隙間が存在します。 従って下記の図のように隙間から空気が押し出され、特別な装置が無くても部屋が破壊されることがないケースが多いのです)pic01

pic02

ところで、やはり防護空間はガスによって破壊されるケースが多いのです。壊れるのは壁であったり、天井であったり、場合によっては外気に面したアルミサッシであったりします。

       

ガス放出に伴う内圧の上昇で防護空間が破壊されないように、避圧装置が設置されています。この装置は所定の圧力で開放され、空気(及び少量の消火ガス)を逃がすようにダクトに接続されています。
この装置さえ設置すれば安心だと考えられがちですが、多くの場合ダクトの有効断面積が設計とは異なり、最悪の場合ではダクトが外部につながっていません。
ドアファンテストではその有効断面積の測定が出来るだけでなく、ダンパー開放設定圧力をかけた際の防護空間の実質隙間面積を計算予測することが可能です。
(CA2001ソフトウェアはガス放出時のピーク圧の計算、避圧装置の必要性の有無まで計算することが可能です)

ca2001-2

 


 

③防護空間の 受動的防火性能のチェック

高付加価値の防護対象を守るガス消火設備の性能保証とは別に、 ドアファンテストには受動的防火性能・空調能力の基本性能チェックという重要な目的があります。

受動的防火性能とはPassive Fire Protectionの訳です。(ガス消火設備はActiveということになります)
室外で発生した火災等の影響をサーバールーム等の内部が受けないようにするという当たり前のことですが、 実際にはその当たり前のことが担保されていないケースがあります。

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Passive Fire Protection Partners社の資料からの抜粋
こちらのよい防護空間を作るにはのページをご参照ください

ドアファンテストをしつつ、必要箇所にシールを施すことをお奨めしております。推奨シール材はカナダPFPグループ製の5100SPです。 地震等による建物の動きに追随するエラストメリック(ゴムのように伸縮する)なシール材です。配管貫通部など遊びが必要な部分に、 ロックウールを装填しその表面に塗布するだけで耐火性能が担保されます。コンプレッサーでの施工さえ可能という優れものです。


④サーバー室の温度湿度管理を容易にするため

あまりに隙間が多い空間は、空調のコントロールが難しくなる可能性があります。力任せに冷房をして温度を下げても、湿度が下がりすぎ、静電気が発生し、サーバーが暴走するという恐れがあります。
双方ともに、根本的な解決には気密性能を含めた空間の質(Integrity of Enclosure)を向上させる必要があります。
手段がドアファンテストということです。採られる手法は上記の ③受動的防火性能の確保と同じです。ガス消火設備が設置されていなくても、チェックが必要かもしれません。

 

ドアファンテストの実際

事実として、事前の知識なしでドアファンテストに一回でパスする防護空間を作ることはかなり困難です。 ゼネコンの方がドアファンテストを敬遠するのは、主にここに理由があります。 経験上、パスし難い原因は大きく分けて3つ挙げられます。

貫通部の埋め忘れ

一つは配線・配管の施工時に明けられた貫通部の埋め忘れの問題です。建築工事・配管工事・ダクト工事・電源工事・IT配線工事などなど、 様々の工事業者がそれぞれの契約形態で一つの防護空間を作ります。 後で塞いでおこうと思いながら忘れられた隙間が見えない箇所で放置されことは避けられません。最終的に一元的に検証することが無ければ、引渡し後もずっと 「工事未了状態」が続くのです。この問題は最終段階で 加圧テストとスモークパッファによって発見され、解決されます。

 

床と壁・壁と天井が接する辺

2つ目は平面と平面がぶつかる辺の問題です。床と壁・壁と天井が接する辺には、従来感覚の施工では多くの隙間があることが多いのです。 壁際にいろんな設備が設置された後では、問題箇所が発見されても手の届かず、文字通り手の施しようが無くなる場合があります。 下の画像の右は床下に設置されたH鋼、床スラブと壁との間に隙間がありますがH鋼がじゃまをしシール出来ません。 こういうケースでは、冷房効率の甚だしい低下の可能性もあります。 この問題は、あくまで施工方法の問題です。殆どの場合ドアファンテスターとの事前の打合せで回避されます。

 

設計段階

3つ目、最後は設計上の問題です。これは気密性能の良し悪しとは必ずしも一致しません。既にこのページを精読いただいたプロの方ならご理解頂けると存じますが、 例えば気密性能の高い空間であっても、防護対象物の高さが天井面と同じラインであったとすると保持時間はゼロなのです。
これは最も端的な例ですが、従って最後の問題は設計段階で事前に打合せが行なわれるべき問題です。 Retrotec社認定のレベル4テスターであれば、そのソフトウェアCA2001を使って詳細なシミュレーションをしながら、設計の詳細打合せを行なうことが可能です。 事前に問題を回避するのが最も経済的な方法です。安心して設計・施工を進め、最終的な安心の仕上げがドアファンテストとなるわけです。

 

 

気密のよい空間を作るには

ドアファンテストとは、防護空間の気密性能を検証するだけでなく向上させてゆくための手段です。
ドアファンテストに合格しないと損害保険料率が高くなるというのは事実ですが、 本質的には防護空間の質を向上させ、維持するということを目的にしています。
欧米では受動的防火性能(Passive Fire Protection)という考え方があります。他の区画からの火や煙の侵入を防ぐ性能という意味です。 ドアファンテストで隙間を探し、有効なシール材で隙間をつぶす。そういう作業が必要なのです。

必要な材料はドアファンとロックウールに加えて、その上に塗布できるシール材です。シール材に求められるのは、 耐火性能・遮炎・遮煙・有毒ガス遮断性能だけでなく建物の動きに追随するゴムのような(エラストメリック)性能も要求されます。(些か驚くは、消防隊の 放水圧力に耐えて剥がれ落ちない試験も行なわれています)

それでは実際にどのようにシールをするのか、実例でご説明します。
これまでにドアファンテストを実施した防護空間は、サーバールーム関連の部屋です。
多くは著名な高層ビルのテナントで、もちろん隙間があるようには見受けられません。しかし実際にファン を回して調べてみると、様々の隙間を見出すことが出来ます。

問題となるのは床スラブと壁の接する部分、ケーブルなどの貫通部などです。実際の例はこちらへ
ドアファンで室内を加圧し、スモークパファで場所を特定します。

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シールしなければいけないのですが、良いシール材が必要です。まず建物は地震等で動きます。その際に割れてしまう材料では意味を成しません。 動きに追随できるものでなくてはなりません。また硬い材料では、地震の動きで配管が壊れてしまいます。
電気ケーブルの貫通部は「追加」が出来なくてはなりません。ケーブルの増設をするために大きめの開口部を設けているのです。十分な耐火性能と気密性能を有しながら 、簡単に切り貼りが出来る必要があります。そんなシール材が当たり前のように使用されているのです。

ご紹介するのはカナダのPassive Fire Protection Partnersという会社が作っているファイヤーストップ材です。

5100sp 写真は5ガロン缶(18.9リットル入り)のものです。この製品に関する資料はメーカーサイトでご覧になれます。
こちらのURLからダウンロード可能です。↓
http://www.firestop.com/downloads.html特にパワーポイントの資料は大変分かり易く出来ています。

日本語版の必要な方はご連絡ください。
MAIL;info@eikan.co.jp
TEL;0776-22-6198/FAX;0776-22-6220
(すべての資料の日本語版があるわけではありません)

約一日で硬化しますが弾力は失われません

5100sp01壁と床との間に
隙間がある場合
5100sp04ロックウールなどを
バックアップ材として
詰めます
5100sp03ファイヤーストップは刷毛などで
簡単に塗ることが出来ます
 

 

  5100sp06ファイヤーストップ5100SPはスプレーで施工することも出来ます


どんなところに隙間があるか

まず床と壁つまり床下の四周の辺と、天井に存在する辺が問題となります。
前者の場合、機械の背後に隠れてしまい手が届かなくなる部分が最も深刻で、機械を据付けた後では文字通り手の打ちようがありません。
後者はデッキと梁型・デッキと壁がぶつかる部分が問題となります。
面と面の接する部分には、耐火性能・気密性能があるだけでなく、地震などの振動に追随するシール材の敷設が必要となります。

 

 pfp01  煙テストで漏れが発見されたら、梁型とデッキ間のシールが必要です(ロックウールをしっかりと充填し表面をシールします)
 pfp02  床と壁ボードの隙間にもシールが必要
 pfp03  次に問題となるのが、ケーブル・配管・ダクトなどの貫通部ですこのような隙間は当然シール対象です
 pfp05  粘土で良くシールされていますが限度があります
 pfp04  ケーブルが多いと中央に隙間が残ります
 pfp06  これらも当然シールの対象です
 pfp07   ドア枠の上下など見えない部分に注意

従来のシール材ではITケーブルなど将来増設の可能性があるものは、本質的に完全なシールは しづらいものでした。しかしこの材料を使えば、容易に目的を達成できます。それだけでなく、ケーブル増設時は カッター一本・ロックウール・シール材これだけあれば至って容易に増設・補修が可能です。

 

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