ドアファンテストの目的は防護空間の完成度の向上です。
パッシブファイヤープロテクション(受動的防火)性能、ガス消火設備の保持時間、 空間の温湿度管理を客観的に数値化し 向上させます
————————————————————- ————————————————————-
ドアファンテスト Door Fan Test本来は、空間の床・壁・天井に存在する隙間の合計面積(ELA)を測定する手法を指します。具体的には下記のような手順を踏みます。 その際、室内外の気圧差とファンの中を通り抜ける空気の量を測定します。 小さな差圧で流量が大きければ 隙間がたくさんあり、逆であれば小さいことが想像できます。 魔法瓶のように隙間がゼロであれば、どんなに差圧が大きくても流量はゼロです。 隙間の場所を探し出すことも容易です。 単なる気密測定としてのドアファンテストでは、測定値(気圧差とファン内部を流れる流量)を使って 空間に開いた隙間量を算出します。その数値がある程度以下になるように隙間を少なくしてゆくというのが、高気密住宅などの性能保証に求められるテストです。 消火設備に求められるドアファンテストには別の意味があります。 NFPA2001、ISO14520に記載されているドアファンテストガス消火設備に求められるドアファンテストには単なる気密測定とは別の意味があります。 列挙すると ①再着火しない時間(消火能力の保持時間)の計算 ①保持時間の計算と予測隙間面積の測定・隙間の位置特定を前提として、ガス消火設備の消火能力の保持時間を計算予測します。 ガス消火設備の長所は、クリーンであるということです。短所は目に見えないことです。 界面の降下ほとんどの消火ガスは空気より比重が高いため空気との混合ガスも空気より重いのです。
底に小さな穴の開いたバケツに水を入れると水面(界面)が下がりますが、それと同じ現象が発生していることがお判りいただけます。 比重の異なる様々なガス同じサイズの穴が空いていたとしても、ガスの重さによって界面が下がる度合いは異なります。穴の空いたバケツに水を入れるのと、二酸化炭素を入れるのとを比較すると、水のほうが早く洩れ出てしまいます。 それと同様に、空気との混合ガスも比重の高いものほど早く漏れ出します。Retrotec社のソフトウェアCA2001(CleanAgent2001)は現在世界で使用されている全ての消火ガスに対応しています。
ドアファンテスト以前に必要なチェック(隙間より深刻な問題)隙間も問題ですが、実質的にはるかに深刻なのは静圧のインバランスです。 ドアファンテストのメリット高価で環境負荷の大きな消火ガスを放出することなく、全ての部屋を合格するまで何度でもテストできるのが ドアファンテストです。 ②避圧装置の性能チェック防護空間にガスを放出すると内部の気圧が上がります。 1.5気圧の部屋というのは壁にどの程度の圧力が掛かっているのでしょうか? ![]() ガス放出に伴う内圧の上昇で防護空間が破壊されないように、避圧装置が設置されています。この装置は所定の圧力で開放され、空気(及び少量の消火ガス)を逃がすようにダクトに接続されています。 この装置さえ設置すれば安心だと考えられがちですが、多くの場合ダクトの有効断面積が設計とは異なり、最悪の場合ではダクトが外部につながっていません。 ドアファンテストではその有効断面積の測定が出来るだけでなく、ダンパー開放設定圧力をかけた際の防護空間の実質隙間面積を計算予測することが可能です。 (CA2001ソフトウェアはガス放出時のピーク圧の計算、避圧装置の必要性の有無まで計算することが可能です)
③防護空間の 受動的防火性能のチェック高付加価値の防護対象を守るガス消火設備の性能保証とは別に、 ドアファンテストには受動的防火性能・空調能力の基本性能チェックという重要な目的があります。 受動的防火性能とはPassive Fire Protectionの訳です。(ガス消火設備はActiveということになります) Passive Fire Protection Partners社の資料からの抜粋 こちらのよい防護空間を作るにはのページをご参照ください ドアファンテストをしつつ、必要箇所にシールを施すことをお奨めしております。推奨シール材はカナダPFPグループ製の5100SPです。 地震等による建物の動きに追随するエラストメリック(ゴムのように伸縮する)なシール材です。配管貫通部など遊びが必要な部分に、 ロックウールを装填しその表面に塗布するだけで耐火性能が担保されます。コンプレッサーでの施工さえ可能という優れものです。 ④サーバー室の温度湿度管理を容易にするためあまりに隙間が多い空間は、空調のコントロールが難しくなる可能性があります。力任せに冷房をして温度を下げても、湿度が下がりすぎ、静電気が発生し、サーバーが暴走するという恐れがあります。 |
事実として、事前の知識なしでドアファンテストに一回でパスする防護空間を作ることはかなり困難です。 ゼネコンの方がドアファンテストを敬遠するのは、主にここに理由があります。 経験上、パスし難い原因は大きく分けて3つ挙げられます。
一つは配線・配管の施工時に明けられた貫通部の埋め忘れの問題です。建築工事・配管工事・ダクト工事・電源工事・IT配線工事などなど、 様々の工事業者がそれぞれの契約形態で一つの防護空間を作ります。 後で塞いでおこうと思いながら忘れられた隙間が見えない箇所で放置されことは避けられません。最終的に一元的に検証することが無ければ、引渡し後もずっと 「工事未了状態」が続くのです。この問題は最終段階で 加圧テストとスモークパッファによって発見され、解決されます。
2つ目は平面と平面がぶつかる辺の問題です。床と壁・壁と天井が接する辺には、従来感覚の施工では多くの隙間があることが多いのです。 壁際にいろんな設備が設置された後では、問題箇所が発見されても手の届かず、文字通り手の施しようが無くなる場合があります。 下の画像の右は床下に設置されたH鋼、床スラブと壁との間に隙間がありますがH鋼がじゃまをしシール出来ません。 こういうケースでは、冷房効率の甚だしい低下の可能性もあります。 この問題は、あくまで施工方法の問題です。殆どの場合ドアファンテスターとの事前の打合せで回避されます。
3つ目、最後は設計上の問題です。これは気密性能の良し悪しとは必ずしも一致しません。既にこのページを精読いただいたプロの方ならご理解頂けると存じますが、 例えば気密性能の高い空間であっても、防護対象物の高さが天井面と同じラインであったとすると保持時間はゼロなのです。
これは最も端的な例ですが、従って最後の問題は設計段階で事前に打合せが行なわれるべき問題です。 Retrotec社認定のレベル4テスターであれば、そのソフトウェアCA2001を使って詳細なシミュレーションをしながら、設計の詳細打合せを行なうことが可能です。 事前に問題を回避するのが最も経済的な方法です。安心して設計・施工を進め、最終的な安心の仕上げがドアファンテストとなるわけです。
ドアファンテストとは、防護空間の気密性能を検証するだけでなく向上させてゆくための手段です。
ドアファンテストに合格しないと損害保険料率が高くなるというのは事実ですが、 本質的には防護空間の質を向上させ、維持するということを目的にしています。
欧米では受動的防火性能(Passive Fire Protection)という考え方があります。他の区画からの火や煙の侵入を防ぐ性能という意味です。 ドアファンテストで隙間を探し、有効なシール材で隙間をつぶす。そういう作業が必要なのです。
必要な材料はドアファンとロックウールに加えて、その上に塗布できるシール材です。シール材に求められるのは、 耐火性能・遮炎・遮煙・有毒ガス遮断性能だけでなく建物の動きに追随するゴムのような(エラストメリック)性能も要求されます。(些か驚くは、消防隊の 放水圧力に耐えて剥がれ落ちない試験も行なわれています)
それでは実際にどのようにシールをするのか、実例でご説明します。
これまでにドアファンテストを実施した防護空間は、サーバールーム関連の部屋です。
多くは著名な高層ビルのテナントで、もちろん隙間があるようには見受けられません。しかし実際にファン を回して調べてみると、様々の隙間を見出すことが出来ます。
問題となるのは床スラブと壁の接する部分、ケーブルなどの貫通部などです。実際の例はこちらへ
ドアファンで室内を加圧し、スモークパファで場所を特定します。
シールしなければいけないのですが、良いシール材が必要です。まず建物は地震等で動きます。その際に割れてしまう材料では意味を成しません。 動きに追随できるものでなくてはなりません。また硬い材料では、地震の動きで配管が壊れてしまいます。
電気ケーブルの貫通部は「追加」が出来なくてはなりません。ケーブルの増設をするために大きめの開口部を設けているのです。十分な耐火性能と気密性能を有しながら 、簡単に切り貼りが出来る必要があります。そんなシール材が当たり前のように使用されているのです。
ご紹介するのはカナダのPassive Fire Protection Partnersという会社が作っているファイヤーストップ材です。
![]() |
写真は5ガロン缶(18.9リットル入り)のものです。この製品に関する資料はメーカーサイトでご覧になれます。 こちらのURLからダウンロード可能です。↓ http://www.firestop.com/downloads.html特にパワーポイントの資料は大変分かり易く出来ています。 日本語版の必要な方はご連絡ください。 約一日で硬化しますが弾力は失われません |
![]() 隙間がある場合 |
![]() バックアップ材として 詰めます |
![]() 簡単に塗ることが出来ます |
|
![]() |
まず床と壁つまり床下の四周の辺と、天井に存在する辺が問題となります。
前者の場合、機械の背後に隠れてしまい手が届かなくなる部分が最も深刻で、機械を据付けた後では文字通り手の打ちようがありません。
後者はデッキと梁型・デッキと壁がぶつかる部分が問題となります。
面と面の接する部分には、耐火性能・気密性能があるだけでなく、地震などの振動に追随するシール材の敷設が必要となります。
![]() |
煙テストで漏れが発見されたら、梁型とデッキ間のシールが必要です(ロックウールをしっかりと充填し表面をシールします) |
![]() |
床と壁ボードの隙間にもシールが必要 |
![]() |
次に問題となるのが、ケーブル・配管・ダクトなどの貫通部ですこのような隙間は当然シール対象です |
![]() |
粘土で良くシールされていますが限度があります |
![]() |
ケーブルが多いと中央に隙間が残ります |
![]() |
これらも当然シールの対象です |
![]() |
ドア枠の上下など見えない部分に注意 |
従来のシール材ではITケーブルなど将来増設の可能性があるものは、本質的に完全なシールは しづらいものでした。しかしこの材料を使えば、容易に目的を達成できます。それだけでなく、ケーブル増設時は カッター一本・ロックウール・シール材これだけあれば至って容易に増設・補修が可能です。